提言・要望 等
平成 27 年 9 月 1 日
日本商工会議所 税制専門委員会
委員長 田中 常雅 殿
日本商工会議所青年部
会長 伴 靖
「税制改正」に関する提言
<基本的考え方>
1、 企業の新陳代謝を促すために
【現状認識】
我が国の雇用の7割を担う中小企業であるが、中小企業の7割が赤字経営という現状を踏まえ、全国の青年部会長からは、さらなる「小規模事業および中小企業」(以下、「中小企業」という)の支援を求める切実な要望があった。経営環境の悪化などの理由から、「現状維持が精一杯」や「次世代への事業承継に対して後ろ向きである」といった声があがる中で、経営者個人の負担する保証や担保については、その範囲が個人資産にまで及ぶため以下の問題につながっている。
青年部メンバーの声からその原因を推測すると、以下のような原因があげられる。
【課 題】
現在の中小企業支援策は中小企業の軽減税率(現在、15%)に見られるような一律の支援を中心とし、それを補完するような補助金を支給するような制度であるとも言え、市場から退出すべき生産性の低い企業も含めて支援することにつながる。こうした生産性の低い企業の延命は地域の雇用環境を悪化させる一因とも言える。
このような現状のもと、国家としてなすべき事を考察し、国、金融機関、経営者のそれぞれが一歩踏み込んで、以下のような企業を「優先支援先」と定義し、制度を整える必要性が高いと考える。
【対象企業】
すべての中小企業を対象にするのではなく、地域をあげて成長を支え、将来にわたって存続させる中小企業(以下、「優先支援企業」という)の定義を明確にし、人的・資金的な経営資源を集中させるべきである。
優先支援企業の条件とそれに対する国・金融機関・企業経営者の為すべきこととしては以下のことが挙げられる。
(1) 創業後、一定期間経過後には経営が安定する事業である
(2) 金融機関の貸出に対する事業性評価の割合を上げられる事業である
(3) 経営者個人の個人保証がなくても安定している事業である
【提 言】
優先支援企業に対して更なる税制優遇を行うことを提言する。
このような現状のもと、国家としてなすべき事を考察し、国、金融機関、経営者のそれぞれが一歩踏み込んで、以下のような企業を「優先支援先」と定義し、制度を整える必要性が高いと考える。
2、事業承継に関わる障壁を軽減するために
【現状認識】
一定以上の持分比率を有し、所有と経営が一致していると認められる株主(必ずしも筆頭株主に限らない)にかかる非上場株式等の持分移転に際しては、レバリッジドリース等本業外への投資や、必要以上の退職金支給等による株価低減対策によって企業価値が毀損することにつながっている。
また、それにかかる相続税や贈与税の納付の延納も制度として認められているが、期間が短く、利子税の負担も重いため、納税額が大きくなりがちな非上場株式等にとっては十分な措置とは言いがたい。
【提 言】
3、M&A 促進税制の拡充
【現状認識】
現状の経営は問題ない中小企業でも、「『経営者の交代』や『他の企業との提携や合併(M&A等)』によって事業の存続が可能にも関わらず、これらの作業がうまく進まないケース」が散見される。
中小企業の M&A 等が円滑に行われない場合、雇用、法人税や所得税収入が失われるとともに、内需と日本のものづくりを支える産業構造や技術などが失われることで、雇用の場が少なくなることによる不安が増加し、少子化・人材不足・技術者不足も加速する可能性もある。特に中小企業の衰退は非常に大きな経済影響があり、大企業の市場さえも失う危険性の高まりに繋がることも懸念される。
中小企業のM&A等が進まない原因として以下のようなものが考えられる。
【提 言】
我々が認識していない M&A 等のチャンスを見つけることから始め、これを促進することで技術立国日本を再生する必要があると考える。中小企業経営基盤の向上と、廃業等による雇用、法人税・所得税収、技術伝承の喪失防止を目的とするM&A促進のための税制改正を検討すべきである。
4、稼ぐ力の向上
【現状認識】
地方における慢性的な労働力不足は深刻であり、企業誘致による地方活性化によって、既存の中小企業の経営を労務面から圧迫するケースが各地での青年部会長からも多く聞かれた。しかし、様々な課題を内包したままで安易に外国からの労働力に依存することも十分な議論がなされておらず、時期尚早といわざるを得ない。
その一方で、出産や育児で退職し、その後、配偶者控除の範囲内で働いている女性や、定年退職後に年金支給に影響のない範囲内で働いている高齢者など、潜在的な労働力を活用しきれていないことも事実である。
【課 題】
【提 言】
5、地域の活性化に向けた固定資産税の課税強化の検討
【現 状】
全国の青年部会長から「地域の商店街でシャッターが閉まっている店舗が目立つようになってきた」との声が多くあげられた。このような状況に対して、自治体等が空き店舗の活用に関する補助金を講じているが、商店街の活性化が進まないのが現状である。
このような状況を鑑み、以下の不動産(以下、「対象不動産」という)に対して課税強化することを検討されたい。
【理 由】
1、 空き店舗、空家を活用できない所有者が売却しない
2、 売却を仲介する宅地建物取引業者の仲介手数料が売却額に関わらず定率のため売却額が低い物件の仲介をしない
【提 言】
以下のようなステップで固定資産税率を引き上げることを提言する。
1、 運用変更案
Step1:
各自治体の都市計画に基づき、対象不動産を有効に活用する上で必要な用途地区(以下、指定エリア」という)に対して全国一律で固定資産税率を引き上げる
→ 固定資産税率 現在=1.4%
改正案=5~10%まで段階的に増税
Step2:
指定エリアの価値向上に繋がる施設としての利用が認められた場合、軽減税率適用の特例(もしくは固定資産税還付の仕組み)を各自治体で設定出来るようにする
【大都市圏に対する例外措置】
大都市圏については、上記提言の「軽減税率適用の特例」は原則として認めず、保有コストを所有者に負担させ、効率の悪い不動産を減らす。
一例は以下の通り。
上記の運用で以下のような効果に繋がると考える
→ 合計特殊出生率 東京都=1.15 沖縄=1.86
→ 大都市圏は子供を産み育て易い環境ではない
→ 地方都市であれば3世代同居も可能になり教育や保育の役割を高齢者が担うこともできると考える
以上