Placeholder image
Placeholder image
Placeholder image
Placeholder image
文字サイズ 

提言・要望 等

平成 26 年 6 月 4 日

日本商工会議所 税制専門委員会
委員長 田中 常雅 殿

日本商工会議所青年部
会長 仲田 憲仁

「税制改正」に関する提言

我が国が抱える大きな問題の一つが「高齢化社会」である。この問題によって、これまでの日本国においてあらゆる構造が従来通り機能しなくなり、「生産年齢人口の減少問題」や「介護保険制度のあり方」など、日本経済や現代の国民生活背景に多種多様な影響が及ぶこととなる。
また、事業承継税制をはじめとする中小企業向け税制については、これまで日本商工会議所をはじめ、様々な団体からの提言を受け、制度改正がなされてきたが、本来の目的を十分にカバー出来ているとは言い難い状況にある。今後さらに実態を反映しやすい制度へ改正するため、中小企業や地域の実情を踏まえながら検討する必要がある。
 日本商工会議所青年部では、高齢化社会を迎えるわが日本において、中小企業やベンチャー企業が活性化し、地域や国民の活力が失われることのないよう、下記のとおり日本商工会議所へ提言する。

1)法人税、固定資産税を減免し、若手経営者による企業経営の活性化を
 【現 状】
・ 高度成長期やバブル期を経験した中小企業の経営者は現役を引退。社長退任後、そのまま役員に留任し続け権限を委譲できていない為、新たな後継者は企業改革が前進しない現状が多い。
・ 新たな事業投資のチャンスがあっても、退任後した前社長は事業リスクを恐れ、新規事業や設備投資を行わず投資の機会が奪われている。
・ 今日の時代がもたらす市場競争の激化や、最新技術の開発へしのぎを削っている企業の多くはその時代にあった事業へ柔軟に対応している。又、それに伴いその時々で新たな事業投資が不可欠である。このような時代のニーズに対応できる企業は成長率が高い。

【提 言】
・ 同族会社が多い日本企業において、1950年代の高度経済成長期に成長を遂げた会社を前社長(親)から現社長(子)が引き継ぎながら依然実権を持ち続けている会社は多い。しかし現社長(子)が新規事業を起こしたいと考えていても、前社長(親)の同意が得られず新たな投資チャンスを逃していることも多い。
・ これは日本経済の発展において大きな損失であり、現状の改善が求められる。
・ そこで、名実共に若手経営陣(社長、役員)が経営する中小企業に対しては、法人税や新たな事業設備等に対して固定資産税の減税を検討する必要がある。

2)事業承継税制の納税猶予要件の更なる緩和を
【現 状】
 ・ 中堅・中小企業の多くが、経営者の高齢化に伴い世代交代期を迎えているが、事業承継がうまく出来ていない企業は多い。
・ 親族経営において、後継者に資質がない場合は承継が進まない。
・ 事前準備が不十分なまま事業承継を行った為にうまく機能せず、企業の事業停滞が起こる場合や最悪の場合廃業に追い込まれることがある。

【提 言】
企業が円滑に事業承継を行い存続していくことで、経済の発展や雇用、さらには法人税・所得税の収入源の確保につながる。相続税や贈与税の抜本的な見直しも含め事業承継に関する納税猶予の条件を更に緩和する必要がある。

3)地方法人税を軽減し、老舗企業の更なる存続の後押しを
【現 状】
 ・ 現代の日本では、設立10年後には約3割の企業が、20年後には約5割の企業が倒産・撤退し、30年後に極めて一部の企業しか存続しにくい時代となっている。(中小企業庁「中小企業白書2011」による)
・ 2013年帝国データバンクの調べで、全144万社のうち、業歴が100年以上の「長寿企業」は2万6144社と判明した。これは全体のたった1.81%であり、企業存続の難しさが顕著に表れている。

【提 言】
・ 企業寿命が年々短命になっている中で、長年に渡り事業を継続している企業はその地域の雇用と産業を支え続け、その地域に地方法人税も長年納め続けていることなどから、地域に大きく貢献し続けている企業と言える。長年に渡り利益を出していても、同じ税率で地方法人税も課税される。
・ このことから、地方の財産とも言える老舗企業の存続を考え、企業の存続年数によって地方法人税の税率を下げていく仕組みを検討する必要がある。

4)扶養控除(所得税減税)を拡充し、家計の介護負担の軽減を
 【現 状】
 ・ 日本国民の平均世帯年収は1994年の664万円をピークに減少を続け、2010年は538万円と、126万円も減少している。さらに、平均所得(538万円)以下の世帯が6割を超え、その比率は年々増加傾向にある。(厚生労働省「国民生活基礎調査」による)
・ 現代は所得の減少に関わりなく、教育費や社会保険料は増加の一途を辿り、さらに近年、両親の介護施設費の負担が大きな問題となり家計を圧迫している。このことは、2000年の介護保険制度が導入され入居型施設の利用は年々増大している。この入居費の負担は扶養する子がカバーしている現状が多く見受けられる。
・ 介護保険制度の入居型施設のニーズは非常に高い。しかし、一人の利用者に対して国の負担額を考えた場合は、在宅サービスと比べるとはるかに高い。また介護保険制度は、在宅サービスをベースとした老後サービスのあり方を考えた制度であり、更なる在宅サービスの利用を促し続けていく必要がある。入居型サービスの利用が多くなれば、今の介護保険制度の維持継続は厳しい状況となる。その為、介護保険料は年々引き上げられ国民の負担額は制度当初と比べて約2.4倍となっている。
・ 現代の家計の支出において、子供の教育費にさらに親の介護費が加わり、大きな負担とな っていると考えられる。

【提 言】
・ 子が親を扶養する現代社会において、介護費用の負担額は大きな問題である。又、同じ介護サービスの中であっても更に在宅サービスの利用割合を増加させる必要性がある。このことから、在宅サービスの利用者(親)でその者へ扶養を行っている者(子)については所得税の減税を行い介護費用の負担の軽減を図る。
・ 同時に、介護サービスの入居型サービスの割合を減らすことで介護保険制度の安定的継続を図る

5)社会福祉法人に対する課税のあり方の検討を
【現 状】
社会福祉法人の意義は、社会福祉事業を行うことを目的として定義された法人格である。本来の社会福祉事業は、利益の追求を目的とせず地域社会に必要不可欠な事業を提供していくことに意義を持った法人である。
昨今、これまで社会福祉法人が担ってきた社会福祉事業に多くの民間企業が参入している。民間企業は、その事業費に対し自己負担をしながら事業運営を行っている。しかし、社会福祉法人はその事業費に対して国や県・市などの税金が使われながら補助金等の優遇も受けている。
・ その事業に対しての報酬は、社会福祉法人も民間企業も同じである。

【提 言】
・ 民間企業が参入できるという事は、一定の利益を確保し事業の安定性が図れるという事であり事業として成立している。一定の利益を生み、法人税や固定資産税、贈与税なども含め納税するということは法人の社会的義務でもある。
・ このことから、社会福祉法人が行う事業のうち社会福祉事業については、民間企業と同様に課税を行う。若しくは、繰越金が一定額を超えた場合にその超過分を国に返還することを検討する必要がある。これにより、国の税収増大、雇用の拡大、職員俸給のベースアップ等に繋げていくことが可能と考えられる。

以上



桃太郎一派
Placeholder image