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平成26年度日本YEG提言

平成27年2月21日

日本商工会議所
会頭 三村 明夫 様

日本商工会議所青年部
会長 仲田 憲仁

我々、青年部は 30,000 名を超えるメンバーの集まりとなり、中小企業の生の声を取り纏め、国や地域、業界が抱える問題や要望を日本商工会議所に対して提言している。青年部ではこの提言活動を主力事業の一つとして、毎年提言を行ってきている。
 ここ数年の提言活動を振り返り、「日本国憲法第 96 条改正」と「選挙制度改正」の問題については、この国のあり方を根本から見つめ直す契機として、特に重要視する必要があると考える。守るべきところはしっかりと堅持しつつも、新しい時代に即した意見を取り入れ、諸課題を改めて提起することで新しい国家のあり方が見えると考える。 又、今年度においては昨今の社会制度についても新たな形で提言していきたい。現在の日本における多くの社会制度の基本形は高度成長期以前につくられたモデルが多く、日本国内の「人口増加ボーナス」と「持続的な経済成長」を前提として描かれている。また、国民一人ひとりへの保障は手厚く、受益者負担以上の見返りがある制度が今も多く継続されている。しかし、今日の我が国経済は成熟期を迎えて、かつてのような高成長ではなく「横這いないし低成長」が続いている。さらに、最も大きな問題の一つである「将来的な人口減少時代への突入」という現実を前に将来像が描けずにいながらも、これら既存の社会制度はそのまま継続されており、我々はこれらを見直す機会をあえて避け続けてきているとさえ言えるのではなかろうか。
今まさに、古い社会制度を丁寧かつ大胆に解体して、新たな社会制度の構築が必要とされている。現代にあった社会制度をその根本から考え直し、負の遺産を次世代へと先送りすることなく、「真実の責任」を国民一人ひとりが正面から見つめ合うことで、新たな日本の社会制度を再構築していかなくてはならない。他の先進国に先駆けて少子化・高齢化社会を生き抜くモデルを提案していくのが我々の使命である。
 各ブロックで行われた会長会議や若手国家公務員とのディスカッション。業種別部会などで地域に密着した日本 YEG の数多くの意見を集約し提言する。

1.日本国憲法第 96 条改正に関する提言

🔶憲法改正要件の緩和

【現状】

現行憲法の 96 条では、「この憲法の改正は、各議員の総議員の 3 分の 2 以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承諾をえなければばらない。この承認には特別の国民投票又は国会の定める選挙の際に行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」としている。衆参両議院のそれぞれ「総議員の 3 分の 2」の賛成が必要あるという事で、憲法改正自体が困難な状況である。
 国家、国民の根幹を成す憲法の改正あるいは自主制定について、主権者たる国民自身が強い関心を持ち、真剣に議論する機運を醸成するためにも、改正の発議および国民承認の要件を緩和するべきと考える。

【提言】

  • ① 憲法改正の要件を「総議員の過半数」に緩和するべきである。
  • ② 国民承認に要件は「有効投票の過半数」に緩和するべきである。

2.選挙制度改正に関する提言

🔶選挙権の年齢引き下げ

【現状】

選挙制度について、地域による一票の格差は議論されているが世代格差について取り上げられないことによる弊害はある。特に「満 18 歳選挙権」については、G8 各国のうち日本のみが例外であり、世界 189 の国と地域のうち、およそ 9 割の国と地域が満 18 歳までに選挙権が与えられている。
 現在、若者世代の政治への関心は薄れており、これからの日本の高齢化社会から考えると、若者世代の負担が大きくなり、負担をする世代が発する意見の反映は必要不可欠である。若者が政治に興味を持つきっかけとなり、「負担」だけではなく「意見の反映」とそれに伴う「責任」を持たせる必要がある。
 そこで、若い世代にも国民の「権利」であり、「義務」とも言える選挙権に対する意識を醸成できると考える。

【提言】

  • ① 世代間格差を是正する機会を提供し、投票行動への自覚を促す意味で、選挙権を早期に満18歳へ引き下げるべきである。
  • ② マイナンバー制度の導入に合わせて、白票も含めた投票行為を「権利」から「義務」の位置づけにして、何らかのインセンティブが働くようにするべきである。

3.現代の地域社会の再構築に関する提言

🔶地方・都市の共存

【現状】

我が国は高度経済成長期以降、国土の均衡ある発展を目指し、社会インフラの整備を進めてきた。人々は利便性と効率を追い求め、結果として都市部への人口の集中、特に東京圏への一極集中を容認してきた面もある。しかし、人口減少局面を迎えた現在においても、地方から都市部への人口流出は一向に止まる気配を見せない。
 また、急速なモータリゼーションの進展の中で街は拡張を続けたが、歩行者中心の従来の街づくりと車社会における利便性の整合が必ずしも取れていなかった。その結果、市街化区域の無秩序な拡散と中心商店街の空洞化という課題を全国各地で抱えるようになった。最近、コンパクトシティという言葉が聞かれるが「都市中心部に必要な施設が揃っていること」ばかりに注目がいき、もう一方の軸である「周辺部との関係が適切に保たれていること」への配慮が欠けているように思われる。「周辺部の切り捨て」とも取れる間違った認識も一部に見受けられるが、周辺部との共存なくして、都市部だけの存続はありえない。
 我々、中小企業の経営者にとって、良質かつ持続的な労働力の確保は重要な課題であり、その観点からも、かつての東京一極集中の成長モデルからの脱却と、持続可能な都市の在り方を全国一律ではなく地域毎に模索していかねばならないと考える。

【提言】

  • ① 個性ある地域の創生 ~真の再生に向けて~
    地域の再生にあたっては、それぞれの持つ歴史等にも配慮する必要があり全国一律では対応しきれない。さらに、従来の行政区分にもとらわれず、例えば広域行政組合単位での柔軟な施策の実施に向けた住民の合意形成への支援メニューを充実させるべきである
  • ② 東京一極集中の解消 ~若者の地域移住・定住促進に向けて~
    少子化という環境下において、各大学も存続をかけて、地域貢献、地域企業との連携強化による教育研究の活性化、社会にとって価値ある若者づくりなど、本当に若者にとって魅力と特色ある大学づくりに取り組んでいる。そういった大学の地方移転促進を、地方自治体と我々のような地域に根差した企業が各大学と連携しながら進められるよう、支援メニューを充実させるべきである。
  • ③ 都市部と農村部の連携 ~持続可能な地域内循環に向けて~
    無秩序に拡大した市街地区域の抑制と行政の効率化のためのコンパクトシティの形成は推進すべきだが、それと同時に都市部と周辺農村部との有機的な連携を強化する必要がある。域内での「人・モノ(特に食糧)・金融・情報」の効率的な循環を促すことは、地域の存続に不可欠であるだけでなく、諸施策の効果を増幅させることが可能になり、そのためのハード、ソフト両面の基礎的インフラの整備および維持管理にかかる費用については優先的に支援するべきである。
  • ④ 地域コミュニティの復活 ~I・Jターンの受け皿づくりのために~
    都市部から地方へのI・Jターンにおいて重要なのは広い行政単位での施策ではなく、自らが居住する町内会や集落単位の狭い範囲での交流である。お互いに顔の見える関係を築けるかどうかが定住を可能にする一つの目安ともいえる。地方へ移住する若者の定住率を上げて、ひいては地域の存続に資するために、そうした新しい公共としての地域コミュニティの形成・再生に向けた取り組みを積極的に支援するべきである。

4.持続可能なセーフティーネットとして「給付と負担のバランス」への提言

社会保障制度の見直し

【現状】

医療技術の進歩や住環境の好転等による長寿化に加え、共働き世帯や経済的に自立した女性の増加等による少子化の進行によって、高齢化率が益々上昇していく我が国の現状において、既得権としての受給者の保障の確保が優先され過ぎており、結果として社会保障費への歳出増加に歯止めがきかない状態である。
 社会保障費の増大は、かえって国民のセーフティーネットであるべき社会保障制度の存在自体を脅かすことになる。現在の社会保障制度そのままの継続は、今日の我が国の人口減少から生じた少子高齢化の実態を考えた際、現在および近い将来の若い世代に過度な負担を押し付けることとなり、その実現性に明らかな疑義があり、持続可能な制度への早急な変革が求められている。

【提言】

  • ○ ①現代にあった「人口」と「年齢層」などのバランスを加味した社会保障制度を実現するために、抜本的な見直しを行うべきである。
  • ○ ②国民の負担増が経済的弱者に与える影響を緩和するために、上記①と合わせて、低所得者層の医療費や介護費の自己負担額を軽減する措置を講ずるべきである。
  • ○ ③福祉サービスの担い手として、社会福祉法人の役割がますます重要になる中で、公益性や非営利性の徹底を図る観点から、法人運営のガバナンスの強化や透明性の向上等、制度見直しを早期に図るべきである。

5.少子化対策への提言

育児経費補助の充実化、労働形態の抜本的改革

【現状】

少子化問題が提起されてから相当の時間が経過したが、一向に改善の兆しは見えてこないばかりか、問題はさらに深刻化している。それは、この問題が単に一過性のものではなく、日本の社会システムそのものに起因するものであり、その根本的な課題解決なくして、乗り越えることができないと認識すべきである。
具体的には、
①長期継続雇用であることを前提とした「年功的内部昇進制度」
②配偶者が専業主婦であることを前提とした「労働形態(長時間労働・配置転換)」
③専業主婦世帯への「優遇税制」や「社会福祉制度」
以上の 3 点が遠因となり、「男性は外で稼ぎ、女性は家を守る」という構造が長い時間をかけて構築された結果、我が国においては「家族単位のワーク・ライフ・バランス」は取れているとも言えよう。
そのような状況下、バブル期に始まった雇用の流動化やその後の長引く不況も相まって、各世帯における将来収支予測が悪化し、子供を産み育てることが若い世代にとっての「リスク」と受け取られてしまっているのである。
一方で、女性の社会的地位の向上と出生率の上昇は相反するという見方も一部にはあるが、他の先進諸国の事例を見る限りではそうではない。欧米諸国との結婚観・家族観の違いはあるにせよ、一人親でも安心して子育てができる社会インフラの整備、つまり、子供を育てることが若い世代にとって「リスク」とならないような環境整備なくして出生率の上昇と少子化からの脱却は望めないと考える。

【提言】

  • ①公立の保育園、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の学費及び「共通必要経費」の公費負担と私立学校に対する同様の経費補助を充実させるべきである。
  • ②育児休暇取得(特に男性社員)の環境整備として、業務のバックアップに必要な人材雇用分の人件費に対する補助を充実させるべきである。

    中長期的には、

    ①働く人の「能力」と「働き方」に応じた多様な雇用形態・賃金体系の確立のために必要な法整備を講ずるべきである。
    ②「管理職」のあり方の抜本的な見直しのための制度設計の支援をするべきである。
    ③地域で子供を育てる「地域コミュニティ」の復活のための人的・資金的な支援をするべきである。

以上



桃太郎一派
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