平成29年度 日本商工会議所青年部 政策提言書

提言1【事業承継】
従業員等への事業承継の促進について
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中小企業の事業承継には、親族内承継、親族外の従業員承継、M&Aの3つの類型があると言われてますが、その中でも親族外の役員・従業員が承継する割合が近年増加しているというデータがあります。
親族外の従業員などが承継するメリットは数多くある一方で、株式の買い取りや個人保証など、多くのハードルがあるとも言われております。
従って、今年度は、この後継者難の時代において、従業員等への承継という選択肢をより活発にするため、以下の2つの提言を行う。

提言1-①  従業員等承継促進のためのガイドラインの拡充
中小企業庁が公表している「事業承継マニュアル」や「事業承継ガイドライン」などは、中小企業経営者の円滑な事業承継を実現していくための方策や手順などが非常にわかりやすくまとめられています。
このようなマニュアルやガイドラインの中で、近年増加傾向にある「従業員等承継」に焦点をあてたガイドラインを新たに策定し指針を示すことで、中小企業の従業員承継を後押ししていただきたいと考えます。
我が国の中小企業は、近年、親族外の従業員などが承継することで、事業を円滑に承継し、業績も向上しているという事例が多く存在します。
このような全国の成功事例などを収集して情報発信をすることで、従業員承継をより促進する姿勢を見せていただくことで、中小企業の事業承継の選択肢が広がり、後継者難による廃業も減少するのではないかと考えております。

提言1-②  後継者が会社から株式買取り資金として受け取った金銭における課税の特例制度の創設
先ほども申し上げました通り、従業員等の承継には様々なメリットがある一方で、「株式の買い取り問題」や「個人保証問題」など、大きな障害もあると言われています。
その中でも、後継者の株式買い取り問題については非常に深刻な問題ではないでしょうか。後継者は、経営を安定させるため先代から株式を買い取る必要性がありますが、従業員である後継者は株式を買い取るのに十分な資金を持っていません。
従業員である後継者が株式を買い取るためには、給与を増額して、その一部を株式買い取り資金に充てるという方法を取らざるを得ませんが、増額した給与にも高い所得税等がかかり、大きな負担となっています。企業を存続させていくために、適正な利益に加え、株式買い取り資金とそれにかかる所得税等の税負担分も利益確保をしていかなければならず、企業存続の大きな弊害と言わざるを得ません。
そこで、後継者が株式の買い取り資金として会社から受け取った金銭については、給与とは別に取り扱い、非課税とする措置を提言いたします。
従業員等の後継者の税負担を軽減することで、株式の買い取りをしやすい環境にし、企業の存続、雇用の維持に繋がり、結果的に税収増にも繋がるのではないかと考えます。

提言2【働き方改革】
中小企業向け働き方改革推進企業認定制度の創設
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今、中小企業は、かつてないほどの人手不足に陥り、最大の経営課題と言われています。今後は優秀な人材を獲得するための魅力ある職場づくりや、多様な人材の活躍推進、生産性向上などに積極的に取り組んでいかないと生き残れない時代です。そして、働き方改革への取り組みは、「優秀な従業員を採用する」、「優秀な従業員を辞めさせない」という、人材不足に対して中小企業が抱える課題そのものを解決するきっかけ、チャンスでもあります。
しかし、労働関係法令等の知識が少ない経営者も多く、大企業の人事部のような部門を持たない中小企業にとって、働き方改革について、具体的にどのように取り組んだらよいかわからないというのが実情です。
そこで、「中小企業限定の働き方改革推進企業認定制度」を設け、その各種項目の条件を満たした企業については、認定証を交付するという制度を提言いたします。
これにより、中小企業が働き方改革推進のために、具体的に何をどのように努力したら良いかが明確になり、認定取得を目指すことで、様々な経営課題も解決することにも繋がります。また、認定取得した際には、企業のイメージアップにもなり、従業員の満足度向上や良い人材の確保に繋がるものと考えます。更には、税制優遇や求人優遇、生産性向上に向けた投資に対する助成、昇給に対する補助など、認定企業に様々な支援措置を充実させることで、中小企業の働き方改革が促進できるものと考えます。

提言3【地方創生】
高校生に対する産官学連携による地元定着の促進
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近年、優秀な若者が大学進学のために地方から都市部へ行き、そのまま戻ってこないことが大きな問題となっている。地方の若者を減らさないためには、地方に若者をとどめる取り組みも1つの方法であるが、地方から出た若者が戻ってきたいと思うような地域づくりや交流、次世代の人材育成を産官学が連携して行っていくことも非常に重要である。
そのために、地方の自治体や商工会議所などが窓口となり、産官学の連携で若者のUターン就職促進の事業を推進していくため、
(1) 地方創生関係交付金の対象となる「若者のUターン就職促進事業」のモデル事業の策定
(2) 本事業を全国の各地商工会議所が取り組むことに対する助成措置の創設
(3) 日本商工会議所による全国の商工会議所の成功事例の収集・情報発信
これらを行うことで、若者の地方への就業促進を加速してきたいと考えております。
今回の提言は、特に、高校生に焦点を当て、地元企業を知る機会の提供や職業観の形成、交流を通じて地元企業の魅力を伝える機会を提供するものです。これにより、若者の郷土愛を育み、地元に戻りたい、地元で働きたいと思う若者を増やしていきたいと思っています。
このような考え方は、2017年12月に発表された「まち・ひと・しごと創生総合戦略2017年改訂版」にも明記されており、今後、国は、地域における若者の就職促進のための法律案も整備する予定ではありますが、このような取り組みは、地域の中小企業が立ち上がらない限り、実現可能性は低いものであります。
従って、地方の自治体や商工会議所などが窓口となり、産官学の連携で積極的に行えるような支援体制を構築するため、自治体に対しては地方創生関係交付金の対象となる「若者のUターン就職促進事業のモデル事業」を策定し、全国でこの取り組みを行いやすい環境を整備します。また、各地の商工会議所が主体となり、地元企業と高校生が交わる機会を増やす活動を積極的に行い、その活動を後押しできるような助成措置設けます。更には、各地の商工会議所が行ったモデル的な事例を、日本商工会議所が情報収集し、全国へ発信することにより、更なる成功事例の増大に繋げ、若者の意識改革、郷土愛の醸成、ひいては地元定着の促進という好循環モデルが構築できるものと考えます。

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