片山 |
その通りです。農業も大変な環境下にありますけど、希望は大いにあるんです。今まで政府の政策通りに来ましたから、「自分たちは企業である」という当たり前の自覚がなかったんですね。それが日本の農業問題を大きくした原因だと思います。農業は本来企業なのだから企業家精神を発揮できる環境をつくらなければと思います。
もう一つ問題は、海外から色んな食材が入って来ることによって、長い間に培われてきた日本の食文化とその食文化によって維持されてきた健康が損なわれやしないかということです。食と地域、食と文化・・・もっと「食」に関心を持とうと鳥取県は提唱しているところなんです。
例えば学校給食にしても、お米が有り余っているのに、地域の経済が困っているのに、その農家の子供達が行く学校で、相変わらずアメリカから輸入した小麦で作ったパンを食べさせるという現実。この鈍感さというのはね、何とか変えなきゃいけないと思いますね。やっぱり食材というのは身近な所で調達するべきじゃないだろうか、大量のエネルギーを使って、船や飛行機を使って運んでくる時代は続かないでしょう。
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鈴木 |
食べ物って、本当に一つの子供達の体を作るのと同時に、心を作っていく上でもとても大切ですよね。
話は変わりますが、最近「あんまり働きたくない」「一生懸命働くのは馬鹿々しい」という若者が増えてきているそうです。このままではとんでもない社会になってしまうので、若者と我々ともっと繋いでいくような仕組みを、地域と共に全国ネットで作っていければなあって思っているのですが。
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片山 |
私ね、人材は一杯いると思うんですよ。ところがね今の学校教育では、良い成績を取って、良い大学に行って、良いところに就職して・・・という一つの価値観を作り上げてしまって、その中で非常に厳しい競争をしている。努力して激しい競争に勝ち抜いて、その結果世間で言う良い仕事に就いたと思っている人たちが実はミスマッチであって、満足していない、人も多い。本来ならばもっと価値観が多様化していて、学校の試験勉強が得意な人もいるし、それから体育の得意な人もいるし、音楽の得意な人もいるし、絵が得意な人もいるし、そういうところでそれぞれ価値を見出す、そういう社会ならいいんですけどね。
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鈴木 |
私達地域の中小零細企業からすると、こんなに不況で職がないと統計的には出ているにもかかわらず、実際に自分たちが本当に欲しいような人材にはなかなか巡り会わない。これは一体どういうことなのか、もう少し上手いお見合いやマッチングなどという仕組みが作れないものなのかと思ってるんです。例えば、インターンシップのような形で、1週間や2週間の短い期間ではなく、例えば夏休み中どこかの会社で働かせるとかそういう事を、私達組織で提唱して、試験的にやってみようかなあと思ってるんですけど。
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片山 |
それはいいことだと思いますね。やっぱり百聞は一見にしかず。やってみると、自分の適性ってわかりますよね。かなり変容して来たとは言うものの、まだまだ日本は終身雇用制度を維持されていますよね。そこで向いてない仕事に就いた時には、本当に不幸ですよね。本人は勿論のこと受け入れる方もね。終身雇用がまだ根強い社会ではなかなか転職は難しいですから、別の所に行ったら凄く才能を発揮できるのに、向いてないまま我慢し続けるというのは勿体無い。難しい試験に合格して公務員になったものの、社会公共のために働くことは望んでなかったとか、難関を突破して教師になったものの、よく考えたらあまり子供好きじゃなかったとか、こういうミスマッチは結局、点数が良かったらここに入れる、そういう理由で職業を決めている人が多いからでしょうね。もっと若い時に自分は何がしたいのか、向いているかのかを見つけることができるような仕掛けが必要だと思いますね。
鳥取県では、中学2年生の時に1週間という短い期間ですが社会体験をします。自分がしてみたい職業、受け入れ先も自分たちで探してね。そのほか、県庁も地元の大学とインターンシップの取り決めをしていて、一定期間学生が来ます。これは非常に良いですよ。
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