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提言活動

提言書(平成19年度~平成24年度)

平成24年度

平成25年3月

②教育改革に関する提言

日本商工会議所
会頭:岡村 正 殿

日本商工会議所青年部
会長:尾山 謙二郎

義務教育課程での日本近現代史の履修時間・内容の充実化
義務教育課程における日本近現代史の履修時間を確保するとともに、その内容の改善し、国民の歴史認識を高めることを提言します。

全国のYEG会長会議での議論

春と秋に全国各地で行われた日本YEG会長会議の中で、「主権と安全保障」に対する多くの議論がなされました。全国のどの地域でも一番のキーワードになったのは憲法改正でありました。国会や各種報道を見ても、憲法改正に関する議論は多くなされ、その関心の深さに注目するところであります。

世界情勢や国内政治、経済及び社会の現況が大きく変化する中で、国のあり方を示す憲法が、昭和22年の施行以来、一度も改正されたことがないことに疑問を持つことは当然のことと言えますが、全国各地で地域経済を支える企業人としても、主権者たる国民の一員としても、責任を持って対処していく重要な課題であります。

日本近現代史を学ぶ十分な履修時間の確保を

現在、国家レベルで抱える諸問題に対する日本国民の関心の度合が低いように感じます。言いかえれば、愛国心が足りない状態と言えるのではないでしょうか。これは多くの歴史教育の中で、日本近現代史を考える時間が少ないことに起因しているのではないかと思います。

幕末、明治、大正、昭和にかけてさまざまな社会変動のあった中で、日本がどのように近代国家を創ってきたのか、といった一番大切な歴史を学ぶ機会が充分に確保されていないことは、国家の危機的状況と言えます。

このため、縄文時代以前から始まる長い日本の歴史が自国への誇りや健全な愛国心の基本であることを踏まえつつ、義務教育課程において日本近現代史の履修時間を確保する学習指導要領の見直しが必要であると考えます。

健全な歴史観の醸成する歴史教育の実施を

歴史を振り返ることは、現在と未来に活かすための知識を得ることであります。歴史認識が曖昧であるということは、今の時代に生きる自分の幸福だけを考えるような、利己主義が蔓延する、いわゆる横軸でものを考えているということが言えます。こんな時代だからこそ、過去からものを学び、今を生きる私たちは何をなすべきかを考え、そして普遍のものとして、何を未来に伝えるのかを考える、いわゆる縦軸の思考を持つことが重要です。このような縦軸の思考で我が国の近現代に関する歴史としっかりと向き合うことで、国民の健全な歴史観が醸成されうるものと考えます。

こうした健全な歴史観を醸成する指導方法には、教科書の記載内容を教えるのみならず、その史実の背景を調べ考察し、その結果を自分の意見として他人に伝えることができるような、人材教育を織り込んだ歴史教育を行うことが求められます。あわせて、教員自身も上述のような歴史教育の重要性についてしっかりと認識していただくことも重要となります。

日本近現代史教育の充実のための教育環境の整備を

上述のとおり、記憶力を試す筆記試験を重視した成績評価方法のため、問題を考察し自分の意見をまとめる力が育ちにくい教育環境にも問題があります。また、教育現場では歴史教育を古代史から順番に扱うため、日本近現代史を取り扱う時間が少なくなっています。

こうした状況を踏まえ、「歴史は過去から順番に取り扱うものだ」という思い込みを検証し、現代から過去に戻って教える手法や、ある歴史的な事件をテーマに、その時代背景を考察する等の多様な指導方法を教育現場で取り入れることが求められます。

また、親世代や教師が日本の近現代史教育に無関心である一因として、その知識習得にメリットを感じられない点にあると思われます。義務教育課程での日本近現代史への履修意欲を増大させるためには、例えば、高校入試問題に日本近現代史の設問を充実させることや、大学入試の際には近現代史の小論文試験を必ず行うなど、高等教育を受けるためには日本の近現代史の履修が必須となるような環境整備を行うことも検討すべきであると考えます。

以上のような考え方・手法で、義務教育課程における日本近代史の履修時間の充分な確保と、履修内容の充実を図ることを通じて、国民の歴史認識を高めることを提言します。

以上