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提言活動

提言書(平成19年度~平成24年度)

平成23年度

平成24年03月17日

④平成23年度地域再生・活性化に関する提言書

日本商工会議所
会頭:岡村 正 殿

日本商工会議所青年部

地域再生・活性化に関する提言~起業・キャリア教育を通じて~

5年後、10年後の未来の地域を担うのは当然現在の子ども達ですが、人材という観点から彼らを育成する事業は、未来に対する地域の投資であり、各地商工会議所にとって必要不可欠です。

そこで、各地商工会議所が、地域再生・活性化を目的に、それぞれの地域において特色を生かした子どもたちへのキャリア教育を推進するための事業・支援・協力活動の中心となり、率先していくために以下の3点を具申いたします。

【1】子ども達の自主的目標設定能力の涵養に資する起業・キャリア教育の積極的推進

子ども達が、主体的に取り組むことができる起業・キャリア教育プログラムを商工会議所(会員、YEG含む以下同)が中心となって積極的に推進し、地域社会総がかりでの教育の為の布石とすることを提案します。具体的には、現在各地商工会議所で実施している職場体験・インターンシップ受入事業から一歩踏み込んで、子ども達の主体性を尊重した(小・中学時の)複数職業体験事業、(小・中学、高校時の)起業・販売体験事業、教室職業体験講話事業、(中学、高校時の)ビジネスプラン策定事業など、地区のコーディネーターと打合せ、地域の実状に合ったプログラムを実践することです。

また、受動的な動機による、受動的な作業体験に留まらないよう、インターンシップについては、子ども達の希望を極力尊重し、複数の生徒が一緒に職場体験をしないように一層の受入企業の拡大と配慮が望まれます。
(P5 「学年別 主体的起業・キャリア教育プログラム事例」 参照)

プログラム例 未就
学児
小学生 中学生 高校生 大学生・各種
専門学校等
1年 2年 3年 4年 5年 6年 1年 2年 3年 1年 2年 3年
複数職業
体験事業

起業・販売
体験事業
教室内職業
体験講話事業

ビジネスプラン
策定事業

(※)職場体験・インターンシップ受入状況と問題点

国立教育政策研究所生徒指導研修センター「平成22年度職場体験・インターンシップ実施状況等調査結果」では全国公立中学校の97.1%、公立高校(全日制、定時制)74.5%(なお、職業に関する学科の場合86.5%)が職場体験・インターンシップを実施しており、先出の平成22年商工会議所における「教育に対する支援・協力活動に関するアンケート調査」の集計結果では教育支援活動している会議所の半数以上、同じく平成22年東京商工会議所「『企業による教育支援活動』に関する調査集計結果においても教育支援活動を行っている企業の約9割が「事業所受入」となっています。

このことから、殆どの生徒が職場体験・インターンシップを行い、受入側の商工会議所、企業側もその対応が殆どを占めていると言えます。

インターンシップについて仕事は生きるために必要不可欠であり、学生のうちに体験し、勤労観を醸成することは今後の人生のために重要です。しかしながら現状のインターンシップは、全員を各企業に割り振る為に、「希望していない事業所に出向く」、「複数の生徒で同一事業所に出向き遊び気分になる」、「なぜ職場体験に来ているのかという意識の低い生徒が多い」、(いずれも、平成22年東京商工会議所「『企業による教育支援活動』に関する調査集計結果」より)など主体的に乏しく、受動的な動機による受動的な作業体験に留まるものも多く、一層の主体性を養う社会教育が必要です。

【2】主体性を持った起業・キャリア教育プログラムの推進

学校での教科教育と並行して、子ども達の自己将来設計を早い段階から考えさせる、主体性を持った社会教育を行う事が重要です。主体性を持った教育とは、「自分で考え、自分で決め、その結果が自分に戻ってくる(責任をとる)」という、社会人として当たり前のことをできる子どもに育てていくことです。

現代は情報化社会に流され、子どもの頃から「自分で考え、自分で決める」経験の少なかった世代が社会の中心となりつつありますが、集団の中で自己充実、自己発揮の経験が少ない為に、逆境に弱く、簡単に離職・フリーターとなる風潮があるばかりか、自殺者が3万人を超えている事も大きな社会問題となっています。

さらにこれから少子高齢化社会を迎えるにあたって、有効労働力が減少する一方であることを鑑みると、社会に適応できる人材育成は必須で待ったなしの状況であることは明白であります。そこで商工会議所が地域社会総がかりでの主体性養成社会教育の中心的な役割を担うことが必要だと考えます。

現在、地区毎に企業との橋渡しをするコーディネーター制度が構築されつつあります。このコーディネーターと相談しながら、その地域に合った起業・キャリア教育プログラムを推進し、地域の未来への投資を続けて行く事こそが、商工会議所に求められる責務であると言えます。

【3】社会起業家の育成

起業・キャリア教育などの実施を通して、地域再生・活性化を目指し続けるためには、行政などに頼り切りになることなく、自ら起案し、社会問題を軽減・解決していくソーシャルアントレプレナー(社会起業家)の存在が重要です。今後は社会全体で、積極的にキャリア教育等に関わっていくことができる社会起業家を多数養成していくことが重点的に望まれます。
(P4 「教育から見る地域再生・活性化のスキーム」 参照)

以上