HOME » 提言活動 » 平成23年度 » ①「税制改正」に関する提言

提言活動

提言書(平成19年度~平成24年度)

平成23年度

平成23年06月19日

①「税制改正」に関する提言

日本商工会議所 税制専門委員会
委員長:井上 裕之 殿

日本商工会議所青年部
会長:兵頭 弘章

<基本的な考え方>

長期にわたりデフレ不況が続いている昨今、我々中小企業の経営状態は日ごとに厳しさを増しており、また、少子高齢化の進展と人口減少社会への突入を控え、社会保障制度にたいする不安が増大している。大企業においては回復基調にあるといわれる経済状況も、中小企業、とりわけ地方においては危機的状況にある。

こうした状況から脱却するためには、地域経済の担い手である中小企業の活性化に資する税制および安定した社会保障制度の再構築と税体系の抜本的改革による財政の健全化が必要不可欠であると考え、以下のとおり要望する。

【1】消費税について

税の逆進性を考慮しながら、消費税率を改定していくことが、安定した社会保障制度と国家の財政基盤に対する国際的信頼性を確保する上で重要かつ不可欠である。

日本の消費税は諸外国に比べて最低水準にあり、消費税率を上げることで、日本の歳入を大きく上げることが可能である。また、消費税は税収額が景気に左右されにくい税制として国の安定収入に繋げることができる。一方で、現行の消費税は全ての物品について一律の課税率であり、このまま増税すると、エンゲル係数の高い低所得者層にとっては死活問題になる。そこで、多くのEU諸国並みに、消費税15%(ただし食品は現状のまま5%)としてはどうか。
※イギリスは消費税20%(食料品は0% ただし贅沢品は17.5%)

【2】所得税について

利子、配当、株式や土地譲渡益に対する分離課税について、現状は下記のとおりである。

  1. 利子所得・・原則20%(国税15%、地方税5%)
  2. 配当所得
    • (1)上場株式等・・15%(大口株主等を除く。)
    • (2)その他・・・・20%
  3. 株式等の譲渡
    • (1)金融商品取引業者等への売委託等により行う譲渡・・10%
    • (2)上記以外・・・20%(国税15%、地方税5%)
  4. 土地譲渡益・・・「分離短期譲渡所得」、「分離長期譲渡所得」に大別される。
    • (1)分離短期譲渡所得・・一般所得は30%(国税30%、地方税9%)
    • (2)分離長期譲渡所得・・一般所得は20%(国税15%、地方税5%)

これらの分離課税のうち、特に上記1~3は恒常的な不労所得でありながら、高額所得者は10%の租税負担で終わるという。

例えば、一部上場企業の株主(発行済み株式の5%未満の保有)が、仮に、配当金を1億円貰っていた場合でも地方税を含め1千万円、勤労所得のみの場合では2,560万円弱の納税者と負担額がほぼ同じである。
地方税を含め5百万円の租税負担は、配当金5千万円、勤労所得では、ほぼ1,560万円程度となり、極めて、高所得者に優遇された税制であり見直しが必要と考える。

【3】独身税創設について

超少子高齢化が加速的に進んでいるわが国において、人口を少しでも増やす方策として、一定年齢以上の独身者(心身障害者等は除く)に、さらなる税(独身税)負担をしていただき、福祉財源として配分を図る。

日本における現行の社会保険制度は、「保険制度」と言われているが、実質「税」的な位置づけが大きく、特に中小企業経営者にとって大きな負担となっている事実は否定できないと共に、看過することはできない。

持続可能な社会保険制度を維持する上でも、「社会保障制度と税の一体改革」の中での真剣な議論と改革が必要であると考える。

【4】医療費控除枠について

少子化対策・育児支援および予防医療の重要性の観点から、予防接種等の予防についての医療行為も、医療費控除枠に算入できるよう、また、現在の10万円以上200万円以下の枠を、最少額ならびに最大額についても拡大するよう提言する。

【5】地域主権と税源の移譲について

掛け声だけの地域主権や国家プロジェクトでありながら地方の裏負担等が継続的に続き、改革されなければ、地域の実情に合わせた特色のある事業に投資できず、数多くの地方都市が沈下していくであろう。ひいては全国的な沈下を招き、更なる国家の停滞を招くことは想像に難くない。消費税の改正に併せ、社会保障費に充てる部分と直接地方に分配する部分を設定し、税源の一部を移譲することを提案したい。

【6】中小企業技術基盤強化税制の更なる強化について

現行の中小企業技術基盤強化税制については、中小企業者等が支出した試験研究費の額について、試験研究費の額の12%の税額控除(当期の法人税額の20%(注)を限度)ができるが、これを、試験研究費の50%の税額控除として、5年間の延長を行うことにより国内法人の90%以上を占める中小企業の経営基盤強化を促す。

【7】事業継承円滑化のための税制措置について

平成20年度に施行された「非上場株式に係る相続税の納税猶予制度」について、改善すべき点があると思われ、以下のことを提言する。

  1. 経産省大臣の事前審査・確認を不要にすること。
  2. 公正証書での遺言書を要件から外すこと。
  3. 5年間の報告義務および納税猶予を廃止すること。
  4. 自社株評価方法を、簿価にて行うこと。

【8】生前贈与について

景気の向上のためには、市場に資金を回す事が必要である。このためには、預金として眠っている資金を潜在的消費力の高い20代後半から40歳程度までの年齢層に効率的に移すことが必要である。そこで、生前贈与に対する相続税は、現行は年間一律110万円の基礎控除があるが、これを年齢別として、25歳以下の法定相続人に対する基礎控除は現行のままとし、26歳~30歳について年間300万円、31歳~40歳までは、年間1000万円、40歳以上は、年間500万円の基礎控除額として、生前贈与を推進する。

国の歳入に占める相続税の比率は小さなものなので、歳入に対する影響は軽微と考えるが、素早い資金の移動を促すために、5年間程度の時限立法化することも有効と考える。

【9】相続税、土地取得税に関する税制改革について

全国に広がるシャッター通りの空き商店舗や一人暮らしのお年寄りが亡くなられた後の戸建ての空き家は、住環境の上で、また保安面でも大きな社会問題となっている。

これらは相続税や土地取得税に代表される土地取引に関する税制にメリットを感じないために、そのまま放置されているケースが多いのが現状である。商業地や住宅地を有効活用することにより、「価値を生み出す土地」「税金が取れる土地」に替えていく必要があり、土地の取引がしやすくなるような抜本的な改革が必要と考える。

【10】ガソリン税と消費税のTAXonTAXの解消について

ガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)及び石油ガス税の上に消費税が課せられている。この二重加算税は直ちに解消していただきたい。

【11】自動車取得税、重量税の廃止について

自動車取得税は消費税と自動車取得税の二重加算税が続いており、直ちに廃止すべきと考える。

また、自動車重量税についても同様、自動車の保有については自動車税が課せられており、追加で自動車重量税を課しているのはおかしいと考える。

以上