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提言活動

提言書(平成19年度~平成24年度)

平成22年度

平成23年02月18日

②将来に渡る持続可能な経済活性化のための「教育」への関わり方についての提言書

日本商工会議所 御中

日本商工会議所青年部
会長:西居 基晴

将来に渡る持続可能な経済活性化のための「教育」への関わり方についての提言書

日本商工会議所青年部(日本YEG)では全国27,000名の会員が、各地で、それぞれの地域に根を張り、地域を愛する青年経済人として、所属する単会で地域をより良くする活動に取り組んでおります。

 全国のメンバーが意見交換、交流するなかで、各地のYEGの仲間からは、「若者の働く意欲の低さ」「地域からの若手人材の流出」を憂慮する声を多く耳にしました。国の将来を支えるのは青少年です。自分たちの地域を、自国を大切に思える、自立し、自律心を持った将来の日本を背負う若者を育成する仕組み創りの必要性を感じ、下記のとおり提言いたします。

【1】中学生を対象にした職業教育の仕組みを確立する「アントレプレナー(起業家)教育」及び「マイスター (ものづくり)教育」

文部科学省の“中学校職場体験ガイド”によると、全国の公立中学校の約90パーセントで 職場体験が実施されており、今後はその日数、時期、実施内容等を見直し、職場体験が生徒にとってよりよいものとなるよう、改善していく必要があると報告されています。

中学生にとって職場体験は貴重な機会であり、その後の勤労観、職業観を形成する過程で、小学生、高校生以上に大きな影響を与える可能性を持つものと考えます。

一方で、地域を支える中小企業にとっては、そこで働く一人一人の役割は大きく、優秀な人材の確保・育成は企業の将来を左右する大きな問題といえますが、現在の若者の求職傾向には偏りがあり、中小企業(特に製造業)は常に人材不足に苦しんでいるという現実があります。

こうしたなかで、若者の働く意欲を喚起し、地域に魅力を感じてもらい人材の流出を防ぐには、地域の中小企業の現場で働く“かっこいい大人の姿”を見せ、その生の声を伝えていくことが必要ではないでしょうか。

こうした活動を通じ、地域の行政・学校・事業所がそれぞれの枠を越えて連携し、若者の勤労観・職業観の育成に取り組めば、「働くこと」に対する視野を広げることも可能となると考えます。

そこで、人間形成の最重要期間にある中学生を対象に、二つの分野での職業教育に重点を置き取り組むことで地域が抱える課題を解決することを提案します。

一つ目は、「アントレプレナー教育」です。(地域の)起業家からその人生を学び、熱意、志に触れてもらうとともに、強い意志で夢に向かって挑戦する素晴らしさを知ってもらうことで、自立心の育成に結び付けます。

二つ目は、「マイスター教育」です。地域のものづくりの現場で活躍する優れた技術・技能者(マイスター)、からその体験を学び、ものづくりの基本となる技術・技能職に若者の目を向けさせることを目的とします。

平成22年度実施の日本商工会議所調査でも、全国の213商工会議所で教育支援・協力活動を実施、インターンシップ・職場体験(179件)、商い体験(28件)、各種講座・授業の開催(22件)等の事業を実施しているとの結果があり、一方、会津若松YEGのジュニアエコノミーカレッジをはじめとして、多くの単会で、教育支援・協力活動に取り組んでいます。

こうした取り組みを更に一歩進め、行政・学校・商工会議所(地元YEG)が連携し、下記の活動に取り組むことで、アントレプレナー教育、マイスター教育を実現し、地域を支える次の世代の人材育成を目指します。

  • 勤労観・職業観に関する講義(実施主体:学校、行政)
    • 各人の将来見据えた「働くこと」に関する基本的な考え方を示す。
    • 国家が勤労観、職業観をどのように捉えるかを伝えることを目的とする。
    • 文科省が中心となり高い倫理観を育む内容で教材を作成する。
  • (地域の)企業経営者(アントレプレナー教育)、熟練技能者(マイスター教育)が体験を語る座学
    (実施主体:行政、商工会議所(YEG))
    • 地域の企業経営者・熟練技能者が自らの体験を語る場をつくる。場を設けることが難しい場合も、ビデオ教材等を活用し、本人の声を伝える場をつくる。
  • 地域の事業所を見学し説明を聞くフィールドワーク(実施主体:学校、商工会議所(YEG))
    • 職場体験前に“大人が働くところ(職場)”について知ることを目的とする。職場体験は実施内容にばらつきが出るため、学校が中心となりフィールドワーク(会社見学、工場見学等現場で調べる活動)を実施。
      起業家、マイスターの生の声を伝えることで、“かっこいい大人の姿”を見せる。
  • 職場体験(実施主体:商工会議所(YEG))
    • 既に実施中の職場体験等を活用。更に多くの地域での取り組みを目指す。
    • 商工会議所が参画することで、企業の意見も踏まえつつ、地域に根ざした取り組みとなり、地域の特性に合致した仕組みづくりが可能となります。

【2】地域の人材を確保するために、国が基金を設け、各自治体はUターンを促進する奨学制度を創出する

現在、大学進学を期に、地域で育んできた将来を担う優秀な人材が都市部へ流出しています。

また、一方で、経済な理由から、県外への進学を断念する場合もあります。将来の地域を担う優秀な人材を育成し、地域のために働いてもらうためには、地域の優秀な人材が高い質の教育を受ける機会を創出し、かつ、大学卒業後、故郷に戻ることを促進する制度の確立が必要です。

今後、道州制を柱とした地方分権を進めるためにも、地域をささえる優秀な人材についても一極集中することがないような制度をつくることが不可欠です。

地域を担う優秀な人材確保を地域にだけ押し付けるのではなく、また、国だけの責任にするのではなく、一部の自治体で始まった『卒業後Uターン就職した場合に奨学金の返済を免除する「Uターン就職の奨学金免除制度」』を、国の出資のもと、全国の自治体の運用により活用できるよう制度整備することを提言します。

以上