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提言活動

提言書(平成19年度~平成24年度)

平成21年度

平成22年03月05日

②地域再生に向けた提言書

日本商工会議所
会頭:岡村 正 殿

日本商工会議所青年部
会長:山内 毅

地域再生に向けた提言書

長引く不況のもと、中小企業は極めて厳しい状況に置かれており、中小企業が経済活動の基盤を担っている地方の市街地の衰退、商店街における空き店舗の増加が全国各地で大きく深刻な問題となっています。

日本商工会議所青年部(日本YEG)が本年度に各地YEGに向けて実施したアンケートの回答はもとより、YEGの諸会合でも常に、商店街の再生が地域の重要課題として挙げられ、改善に向けた取組みの強化が必要とされています。

これまで地域経済の発展や地域コミュニティづくりに大きな役割を果たしてきた商店街は、10年前の大規模小売店舗立地法施行にともない全国各地の郊外に矢継ぎ早に建設された大型ショッピングセンターにより、大きな影響を受けています。一つの大規模繁華街に匹敵する商業機能を持つ大型ショッピングセンターの登場により、商品の目新しさや価格競争力に劣る既存の小売店は顧客の流出が甚だしく、後継者不足や折からの不況のあおりを受けて中心市街地や商店街は疲弊の度を増しております。このため、地域経済の活力低下のみならず、地域のコミュニティや地域文化も衰退の危機にあります。地域コミュニティ喪失は、治安の悪化にもつながることが懸念されるほどになっています。

しかしながら、地域の衰退にただ手をこまねいているわけにはいきません。今われわれが置かれた状況を打開するには、地域が有する人材、情報、産業等の資源を掘り起こし、それらを有機的に連携させながら、地域一体となって再活性化に向け強力に取組むことが不可欠であります。

各地YEGでは、これまでも、地域の住民とともに、商店街を会場とした各種イベント開催、空き店舗を活用したカフェやフリースペースの運営、オリジナルエコバックの販売、小学生の販売体験といったユニークな事業を展開するなど、地域を盛り上げるためのさまざまな取組みを実践してきています。

日本YEGでは、こうした取組みについて情報を共有するとともに、全国に広がるYEGのネットワークを活用し、熱い思いを一つにして、さらに具体的な活動を活発化してまいる所存ですが、われわれの活動に呼応して地域を挙げた取組みを促進する観点から、地域住民の協力、人材育成の必要性等について下記のとおり提言いたします。

1.まちづくり会社の株式公募制度を活用して住民活力を取込む

まちづくりや商店街再生のためには、地域住民の力をどのように取込んでいくかが鍵となります。まちづくりを担う主体の一つとして、まちづくり会社がありますが、株式公募制度の存在はあまり知られておらず、一般による株式の保有は少数にとどまっております。他方、地域住民にまちづくりへの関心を高め、積極的に関与してもらうという意味においては、より多くの人々に株式を保有してもらうことが重要です。

出資を募るに当たっての魅力は配当ということになりますが、まちづくりの場合には、金銭でなく、例えば、地域住民が自由に利用できる場所が提供されること、地域住民が憩える快適な空間が提供されることなど、気持ちよく暮らせるまちが形成されること、それが配当であると訴えたいと思います。

地域住民の理解と支援なくしてまちづくりの成功は期待できません。そのためにも、まちづくり会社の株式公募制度を積極的に周知・活用し、地域住民の株式保有を高めることを通じて住民の力をまちづくりに取込むことが重要であると考えます。

2.各種支援制度を活用して地域再生を主導する人材を育成する

地域、商店街を再生するためには、中心となりまち全体を引っ張る人材が必要です。そのためには、リーダーや率先して動く人材を一人でも多く確保・育成することが重要です。

日本商工会議所等中小企業支援団体が出資して設立した「㈱全国商店街支援センター」が行っているリーダー育成のための研修制度や、中小企業基盤整備機構の中心市街地商業活性化アドバイザー派遣制度などの支援策をフルに有効活用し、地域再生のために先頭に立って動く人材、商店街に新鮮なアイデアと活気をもたらす人材等の育成を進めることが必要です。

こうした支援制度については、その積極的な活用を図るとともに、地域事情に応じた制度の柔軟的な運用について必要な改善を求めていきたいと思います。

3.チャレンジショップを活用してまちの賑わい創出の核とする

現在、全国で商店街振興のため、自治体等によるチャレンジショップ制度が設けられており、新規創業者向けに少ない負担での事業立ち上げを支援しています。

チャレンジショップは、主に小売、サービス業の事業所立ち上げに使われる他、コミュニティ・ビジネスや社会貢献活動を行う場として、そのスペースが活用されております。主婦のアイデアによる惣菜屋、退職後の夢を実現してのコーヒーショップ等身近なサービスを提供する事業の創業や、地域の情報発信・交流拠点を目指したカルチャースペース、アートギャラリー運営などのコミュニティ・ビジネス、社会貢献活動などを行う実践の場として、商店街は大きな価値を有しています。

YEGでも、チャレンジショップを活用してまちの賑わい創出に取組んでいる例が各地で見られます。われわれは、さらにこうした取組みを広げていくとともに、創業等の意欲ある者が使い易く、また自立できる支援策の追加を含めチャレンジショップ制度のさらなる拡充を関係者に求めてまいりたいと思います。

以上