提言活動
提言書(平成19年度~平成24年度)
平成20年度
平成20年11月07日
①“銀行引受私募債”発行基準緩和に関する提言
日本商工会議所
会頭:岡村 正 殿
日本商工会議所青年部
会長:工藤 哲弘
中小企業に「社債発行」の門戸を広げよう!
信用保証協会「中小企業特定社債保証制度」を活用した
“銀行引受私募債”発行基準緩和に関する提言
日本の経済が真の意味での回復を果たし、持続的な経済成長を図るためには、わが国経済の屋台骨を支える中小企業が活性化し、健全な企業経営を行い、地域経済発展のために貢献することが必要です。その中小企業が、健全な企業経営を行なうためには、長期に渡る安定した資金の調達が必要不可欠です。
これまで大企業を中心に、社債発行などの「直接金融」による資金調達手段の多様化が大きく進んでいるにもかかわらず、中小企業はほとんどの場合、金融機関からの借入、すなわち「間接金融」に依存するしかなかったために、必要な資金の調達が出来ずに、新たな事業の展開を阻まれるといったケースなどが多々あったのではないでしょうか。
また、これまでの中小企業への金融施策は、優遇金利などによる金融機関からの借入がほとんどで、資金繰り対策の融資などは年度末や季節ごとに打ち出され、さながら年中行事になっているほどで、多くの場合これらの借入を複数抱え、借入したその月から返済が始まるなど、一時的に資金繰りをしのぐことは出来ても、恒常的に資金繰りに四苦八苦しているのが実状であり、日常的なキャッシュフローを向上させ、長期的に資金繰りを安定させることが、今の中小企業にとって、急務の金融施策の1つではないでしょうか。
以上のように、これまで金融機関からの借入(間接金融)に依存するしかなかった中小企業に、今後、「直接金融」という資本市場を通じた資金の調達をしやすくするためにも、現行制度である、信用保証協会の「中小企業特定社債保証制度」を活用した“銀行引受私募債”の発行基準をより緩和していただき、中小企業が「社債」を発行できる機会を広げ、原則無担保・固定金利の長期安定資金が調達しやすい環境を整えていただきますよう提言いたします。
中小企業が発行する社債に、信用保証協会が保証を付ける制度「中小企業特定社債保証制度」が2000年に導入(下記表 基準1、基準2)され、その後 2006年から保証対象が拡大(基準3)されましたが、今後更に保証対象を拡大していただくよう次の基準を要望いたします。
●信用保証協会「中小企業特定社債保証制度」による“銀行引受私募債”の適債基準要望
※太字部分
要 件 | 項 目 | 2000年導入時 | 2006年追加 | 基準要望 | |
基準1 | 基準2 | 基準3 | |||
必須要件 | 純資産額 | 5億円以上 | 3億円以上 | 1億円以上 | 5千万円以上 |
ストック要件 | 自己資本比率 | 15%以上 | 20%以上 | 20%以上 | 15%以上 |
純資産倍率 | 1.5倍以上 | 1.5倍以上 | 2.0倍以上 | 1.5倍以上 | |
フロー要件 | 使用総資本事業利益率 | 5%以上 | 10%以上 | 10%以上 | 5%以上 |
インタレスト・ガバレッジ・レシオ | 1.0倍以上 | 1.5倍以上 | 2.0倍以上 | 1.0倍以上 |
※その他
- 必須要件に加えて、ストック要件・フロー要件は、いずれか1つを充足すれば可
- 償還期間は2~7年の設定
- 2億円まで原則無担保
●発行金額および償還方法の基準要望
※太字部分
2000年導入時 | 2006年改正後 | 基準要望 | |
発行金額 | 5千万円以上5億円未満 | 3千万円以上5億円未満 | 1千万円以上2億円未満 |
償還方法 | 満期一括償還 | 満期一括償還・分割償還 | 満期一括償還・分割償還 |
●発行のメリット
- 銀行借入(間接金融)による資金調達とは異なり、私募債(有価証券)による資本市場からの直接資金調達(直接金融)になるため、増資と借入金の中間的性格をそなえ、資金調達手段の多様化が図られるとともに、多額の資金を原則無担保で、長期間安定して計画的に調達することが出来る。
- 満期一括返済(償還)の場合、月々の返済(約定弁済)がない。
- 月々の返済がないため、キャッシュフローがアップし、資金繰りが向上する。
- 金利は市場金利を反映した固定金利で、半年ごとの後払いとなるため、資金調達コストを確定することができ、損益計画がたてやすい。
- 私募債を発行した場合は、届出や報告の形で財務省や日本銀行などに公表され、新聞にも取り上げられるほか、発行基準をクリアーできる財務内容の企業でなければ、私募債を発行することができないため、対外的な企業のイメージや信用力が格段にアップする。
以上
平成21年4月10日(金)に政府にて決定された「経済危機対策」において、緊急保証の規模拡大(20兆円→30兆円)、セーフティネット貸付等の規模拡大(10兆円→17兆円)をはじめとした、中小企業金融対策の拡充が盛り込まれ、下記の形で平成21年5月11日(月)より実施されることとなった。